クラフトビール事業に補助金は活用できる？

クラフトビール事業は近年、多くの消費者に支持され、その市場は拡大を続けています。独自の味わいや地域特産の素材を活かしたビール作りは、多くの人々の興味を引きつける魅力があります。
しかし、クラフトビール事業を始めるためには、醸造設備や店舗の開設など初期投資が必要です。そこで重要になるのが、各種補助金の活用です。

本記事では、クラフトビール事業を立ち上げる際に利用できる補助金とその活用方法について解説します。

補助金の種類と概要

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

この補助金は、製造業や商業、サービス業の生産性向上を目的とした事業に対して支給されます。対象となる経費は、機械装置費やシステム構築費、クラウドサービス利用費などです。一般型の助成金額は上限1,000万円で、助成率は1/2（小規模事業者は2/3）となっています。

事業再構築補助金

ポストコロナ時代に対応するため、思い切った事業再構築を支援する補助金です。対象となる経費は、建物費や機械装置費、広告宣伝費など幅広く、助成金額は100万円から6,000万円、助成率は2/3です。新たな事業モデルの構築に必要な経費をサポートします。

IT導入補助金

ITツールを導入する経費の一部を補助するもので、対象経費はソフトウェア費や導入関連費です。助成金額は30万円から450万円で、助成率は2/3です。ITツールを活用して業務の効率化を図りたい場合に適しています。

小規模事業者持続化補助金

販路開拓や業務効率化を目指す小規模事業者を対象とした補助金です。対象経費には、機械装置等費や広報費、展示会出展費などが含まれます。助成金額は最大50万円（特定条件下で100万円）、助成率は2/3です。申請手続きが比較的容易で、多くの小規模事業者が活用しています。

補助金の公募スケジュールと採択率の目安

補助金は常時募集しているわけではなく、公募期間が設けられています。計画的に準備を進めるために、各補助金のスケジュールと採択率を把握しておきましょう。

補助金名	公募時期（目安）	採択率（参考値）
ものづくり補助金	年4〜6回（2〜3か月ごと）	約30〜45％
事業再構築補助金	年3〜5回程度	約40〜60％
小規模事業者持続化補助金	年3〜6回程度	約50〜65％
IT導入補助金	年4〜10回程度（ITベンダー登録の関係で頻度多め）	約60〜80％

また、補助金は「交付決定前に着手（発注・契約）」すると不支給になる場合があるため、スケジュールには十分な余裕を持って対応しましょう。

補助金の併用ルールと助成率の考え方

複数の補助金を併用して支援を受けたいと考える方も多いですが、補助金には「重複補助NG」などのルールがあるため注意が必要です。

• 同一経費は複数補助金で重複して受けられない
  例：同じ醸造タンクに対して「事業再構築補助金」と「ものづくり補助金」の両方を申請することは不可。
• 地方自治体の支援金や制度融資との併用は可能な場合がある
  例：自治体の創業補助＋国の補助金などは、制度によっては組み合わせOK。

助成率の例（2/3補助の場合）

例）醸造設備に1,500万円かかる場合

• 2/3補助なら → 補助金：1,000万円、自己負担：500万円
• 1/2補助なら → 補助金：750万円、自己負担：750万円

補助金の対象外となる費用（不動産取得・飲食材料費など）もあるため、実際の補助対象額と助成額を必ず確認しましょう。

補助金の活用方法

設備投資

クラフトビールの醸造には専門的な設備が必要です。醸造タンクや発酵装置、冷却システムなどの導入には高額な費用がかかりますが、補助金を活用することで初期投資の負担を軽減できます。

販路拡大

新たな販路を開拓するために、オンライン販売の開始や広告宣伝活動を強化することが重要です。補助金を利用してECサイトを構築したり、SNS広告を展開することで、より多くの顧客にリーチすることが可能です。

業務効率化

ITツールを導入して業務を自動化し、効率化を図ることができます。例えば、在庫管理システムや受注処理システムを導入することで、手作業の煩雑さを軽減し、業務のスピードと正確性を向上させることができます。

事業計画書の作成ポイント

補助金を申請する際には、具体的な事業計画書が必要です。事業計画書には、以下のポイントを明確に示すことが重要です。

• 具体的な施策とその根拠：数値データや市場調査に基づいた実現可能な施策を記載します。
• 市場調査と競合分析：対象市場の動向や競合他社の分析結果を含めます。
• 財務計画と収支予測：売上予測や経費見積もりを具体的に記載し、収支計画を明確にします。
• 補助金の目的に沿った記述：補助金の目的に一致するように、計画の具体的な効果を示します。

採択後に必要な手続きと資金繰り対策

補助金は採択されたらすぐに入金されるわけではありません。実績報告や交付決定などのプロセスを経るため、事業者側には一定の資金繰り対策も求められます。

採択後に必要な主な対応

• 交付申請・事業実施・実績報告・完了検査 などのプロセス
• 定期的な報告や帳簿の保管義務（最大5〜10年間）
• 万が一、不正使用が発覚した場合は返還命令の可能性もあり

キャッシュフローの注意点

• 通常、補助金の入金は事業完了後の後払い（精算払い）
• 補助対象経費の全額を一時的に立て替える必要がある
• そのため、つなぎ資金（制度融資・日本政策金融公庫の融資など）の確保も検討しましょう

補助金は“もらえるお金”ではありますが、申請から完了まで1年近くかかるケースもあります。あらかじめ現金の流れを見据えた事業設計が重要です。

専門家の活用

補助金申請の成功率を高めるためには、専門家の支援を受けることが有効です。補助金申請支援サービスやコンサルタントは、豊富な経験と知識を持っており、事業計画書の作成や申請手続きのサポートを行ってくれます。代行先を選ぶ際には、実績やコストをしっかりと比較検討しましょう。

ケーススタディ

小規模事業者持続化補助金の活用事例

あるクラフトビール醸造所は、小規模事業者持続化補助金を活用して、オンライン販売を開始しました。ECサイトの構築費用や広告宣伝費を補助金で賄い、販路拡大に成功しました。また、醸造所管理システムの導入により、業務効率化を図り、売上を伸すことに成功しています。

事業再構築補助金の活用事例

別のクラフトビール醸造所は、事業再構築補助金を利用して新たなビールブランドを立ち上げました。地元の特産品を使用した新製品を開発し、広告宣伝活動を強化しました。その結果、地域の特産品を活かした独自のビールが話題となり、販売数が大幅に増加しました。

参考資料

• ものづくり補助金 公式サイト（https://portal.monodukuri-hojo.jp/）
• 事業再構築補助金 公式サイト（https://jigyou-saikouchiku.go.jp/）
• 小規模事業者持続化補助金 公式サイト（https://r3.jizokukahojokin.info/）
• IT導入補助金 公式サイト（https://www.it-hojo.jp/）

補助金の申請に悩んだ場合は、専門家への相談も検討しましょう。補助金の活用を通じて、クラフトビール事業の成功を目指してください。