自社だけのオリジナルビールを造るために、押さえておきたい醸造のポイントをまとめてみました。どのようなプロセスで醸造が進んでいくのか、基礎知識として頭に入れておきましょう。
オリジナルビールの場合、自社ならではの原材料を使うことで他にはない個性を出すことが可能です。地元の名産品や、提供するメニューとのコラボなどを考慮し、使いたい原材料を選びましょう。
使いたい原材料が決まったら、醸造するビールのレシピを設計。ビールの原料となるモルト(麦芽)・ホップにはさまざまな種類があるため、オリジナル原料との比率も考えながらレシピを考案します。
大麦を15度程度の水に浸し、そのまま2日間ほど放置。発芽を確認したら大麦を水から取り出し、温風で乾燥させて芽の成長を止めます。乾燥させる工程を「焙燥」と言いますが、この焙燥を終えた大麦が、いわゆるモルト(麦芽)です。 焙燥の温度によってモルト(麦芽)の色や風味、ひいてはビールの味も変化。温度別で、主に次のようなモルト(麦芽)が生成されます。
温度が高くなるにつれ、モルト(麦芽)の色や風味の特徴が強くなっていきます。
レシピの設計が終わったら、モルト(麦芽)を粉砕機で砕くミリングから醸造がスタート。ビールの醸造にはモルトに含まれるでんぷんが欠かせませんが、モルトを砕くことででんぷんが抽出されやすくなり、効率よく糖への分解を進めることが可能となります。
粉砕したモルト(麦芽)を65度前後のお湯に混ぜ、「マイシェ」と呼ばれる粥状の状態にします。
マイシェの中では、大麦の発芽過程で生まれた酵素の働きにより、でんぷん質が糖に、タンパク質がアミノ酸に分解。この工程を「糖化」と言います。
糖化が進んだ後、マイシェをろ過。ろ過によって固形物が取り除かれた液体が「麦汁」です。
殺菌および不要な成分を揮発させるため、麦汁を沸騰させます。この際、適度な苦味を付けるためにホップを投入。ホップに含まれるアルファ酸が沸騰の熱によりイソアルファ酸という成分に変化し、ビール特有の程よい苦味が生まれます。
ホップは何段階かに分けて投入されますが、香り付けの役割を持つホップ精油は揮発しやすいことから、沸騰の最終段階で投入されます。
沸騰プロセスの終了後、ワールプールと呼ばれるタンクに麦汁を移動。ホップの投入で生じた固形物やタンパク質などを取り除き、麦汁をクリアな状態へと仕上げます。
その後、酵母が発酵しやすいとされる温度まで麦汁を冷却。エールの場合は15~25度程度まで冷却し(上面発酵)、ラガーの場合は5~10度程度まで冷却します(下面発酵)。下面発酵に比べ、上面発酵は発酵時間が短めになります。
できあがった麦汁を冷やして発酵タンクに移し、発酵のための酵母を投入。麦汁内に含まれる糖を酵母が分解することにより、アルコールと炭酸ガス(二酸化炭素)が生成されます。アルコールについては、麦汁の糖度が高いほど濃度が高くなるのが特徴。発酵期間はエール酵母で3~6日、ラガー酵母で6~10日が目安となります。
発酵が終わってすぐの未熟なビールは「若ビール」と呼ばれ、貯酒タンクに移されて数日間にわたり熟成されます。残った糖と酵母による発酵は熟成中も続いており、生成された炭酸ガスがビール内に溶け込んで、独特ののどこしや爽快感を作り出します。
熟成後、一般的にはろ過で酵母を取り除くか、または熱処理によって酵母の活動を停止させます。ビールの品質保持が目的です。
ただし、クラフトビールの中には、あえて熟成後のろ過や熱処理を行わない銘柄も少なくありません。生きたままの酵母をビールに残すことで、酵母特有の旨味を活かしたオリジナルな味へと仕上げるためです。
ちなみに、ビールの底に白く漂うように浮遊するものを目にすることがありますが、あれこそが生きた酵母菌。クラフトビールを味わう際には、ぜひ目を凝らして見てみましょう。
ビール作りの最終工程がパッケージング。完成したビールを缶や瓶、樽などに充填するプロセスです。
商品としての画一性維持や消費のしやすさなどのほかにも、酸化による品質劣化を防ぐ目的で、パッケージングは非常に重要な工程の1つとなります。
オリジナルのビールを醸造するには、専門のメーカーに依頼をするOEMと、自社でマイクロブルワリーというビール醸造所をつくる方法があります。それぞれの方法にメリット・デメリットがあるため、より自社のニーズに合った方法を選ぶようにしましょう。