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クラフトビール導入におけるOEMとブルワリーの違い

クラフトビールが注目を集める今、自社でもクラフトビールを導入したいという企業・施設は少なくありません。せっかくクラフトビールを造るならオリジナルの商品を開発したい、そういった場合の選択肢には「OEM醸造」と「ブルワリー開業」の2つの方法が挙げられます。ここでは、OEMとブルワリーの違いについて解説していきますので、情報を参考にしてみてください。

目次

はじめに:OEMとブルワリー、どちらが自分向き?

クラフトビールの導入には、「OEM醸造」と「ブルワリー開業」という2つの方法がありますが、どちらが自社にとって最適か判断するのは簡単ではありません。そこでまずは、以下の簡易チャートを参考に、ご自身の目的や状況に合った選択肢を確認してみましょう。

▼クラフトビール導入タイプ診断チャート

① 初期投資として1,000万円以上の予算がある
 └─ Yes → ② 開業までに1年程度の準備期間をとれる
   └─ Yes → 【ブルワリー開業】向き
   └─ No → 短期型の小規模ブルワリー/OEM併用がおすすめ
 └─ No → ③ 少量から試験的に始めたい
   └─ Yes → 【OEM醸造】向き
   └─ No → 他手段を検討(仕入れ販売など)

OEMは低コストでスピーディーに導入できる反面、製造工程の自由度は限定されます。一方、ブルワリーは初期投資と準備期間を要しますが、オリジナリティや醸造体験価値を最大限に活かせます。

OEMとブルワリー、目的別に選ぶ導入スタイル

クラフトビールの導入を検討する際には、「低リスクで試したい」「長期的にブランドを育てたい」など、企業ごとに異なる目的があります。ここでは、導入目的や運用条件に応じて、どちらの方法が適しているのかを分かりやすく整理しました。自社の状況と照らし合わせて、導入スタイルを選ぶ参考にしてみてください。

導入目的・運用条件別 比較表

導入目的・状況 向いている導入方法 解説
まずは少量からテスト導入して反応を見たい OEM醸造 小ロットでの製造が可能。初期投資が抑えられ、柔軟に試せるためリスクが低い。
イベントや季節限定商品を出したい OEM醸造 タイミングに合わせて短期製造できるので、販促にも活用しやすい。
空きスペースや自社物件を活用したい ブルワリー 余剰スペースを活かして常設のマイクロブルワリーとして活用可能。観光資源化も。
地域性やストーリーを活かして独自ブランドを構築したい ブルワリー 副原料や製法を自由に選べるため、地域の特産物やテーマを反映しやすい。
物流コストや在庫リスクを最小化したい ブルワリー 店舗併設型にすれば製造直販ができ、流通経費をカットできる。
ビール製造に継続的に関わりたい/体験価値を提供したい ブルワリー 製造工程そのものをビジネスや観光価値として活用できるのが強み。
中長期的に利益率を高めていきたい ブルワリー 初期投資は大きいが、原価率を下げていくことで利益率が向上するモデルを組める。

併用も一つの戦略

なお、最初はOEMで市場ニーズを探り、将来的にブルワリー開業に発展させるといった段階的な導入も選択肢の一つです。無理のない予算とスケジュールで、段階的に自社ブランドを確立していく流れも広く採用されています。

このように、自社の目的や制約に合わせて導入手段を選ぶことで、クラフトビールの活用はより効果的かつ持続可能なものになります。次のステップを検討する際の参考としてご活用ください。

法規制と免許要件の比較

導入方法を選ぶ上で見逃せないのが「免許制度」の違いです。以下の表で簡単に比較してみましょう。

区分 必要な免許 補足事項
OEM醸造 原則不要(製造は委託先が実施)
※自社ブランドで販売する場合は「自己商標酒類卸売業免許」が必要になるケースあり
法的手続きや設備準備は委託先が実施。テスト導入に向いている。
ブルワリー ビール製造免許(年間60kL〜)
または発泡酒製造免許(年間6kL〜)
設備・人材・事業計画・衛生管理体制の整備が必要。取得まで半年以上かかる場合も。

※なお、2020年代以降は発泡酒免許の活用によって「副原料入りクラフトビール」の醸造も可能になっています。

コスト&スケジュール早見表

下記はOEM醸造とブルワリー開業における、主な費用・スケジュール・制約条件などを一覧にした比較表です。

項目 OEM醸造 ブルワリー開業(マイクロブルワリー)
初期費用 数万~数十万円(レシピ開発・試作) 設備・内装・物件取得などで1,000万円〜3,000万円
製造ロット 15~30Lの樽、瓶なら1,000本〜から対応可能なメーカーあり 1仕込あたり200〜500Lが標準
リードタイム 約1〜3か月(開発+製造) 約12〜24か月(物件確保・免許取得含む)
物流・在庫 冷蔵配送が必要/在庫保管リスクあり 店舗直送可能/冷蔵物流コスト不要
メリット 小ロット・短納期・設備不要 自由な製品設計・出来立て提供・ブランド力向上
デメリット 醸造自由度が低い・輸送コストが発生 高コスト・時間と労力が必要・免許取得ハードル

OEM醸造は、初期費用や導入スピードの面で優れており、少量生産やテスト販売を目的とした導入に適しています。一方で、自由なレシピ設計や出来立ての提供、ブランド価値の向上を目指す場合は、ブルワリー開業が有効です。ただし、ブルワリーは高額な初期投資や免許取得、長期的な準備期間が必要になるため、事業計画や目的に応じた選択が重要です。

コストとスケジュールのバランスを踏まえて、自社にとって最適な導入方法を見極めましょう。

OEM醸造とそのメリット

OEMとは「Original Equipment Manufacturing」の略称で、他社ブランドの製品製造のこと。クライアントの名義やブランド名を冠した商品の製造を、委託されたOEM会社が代わりに行うというサービスです。クラフトビールの場合、OEM醸造を手がける企業がクライアントの希望するビールを製造し、納品するという形になります。そんな、クラフトビールのOEM醸造のメリットは以下の通りです。

小ロットで本格的なクラフトビールを造れる

クラフトビールのOEM醸造を行っている企業の多くが、小ロットに対応しています。初めてクラフトビールを導入するといった場合、いきなり大量に製造するのは不安が残るもの。そういった場合、OEMであれば小ロットからスタートして顧客の反応をチェックすることができます。また、マイクロブルワリーの導入が難しい店舗などであっても、OEMを利用すればオリジナルのクラフトビールを提供することが可能です。

オリジナルのビールをプロが開発してくれる

クラフトビールのOEMを手がけているメーカーには、その道に詳しいプロフェッショナルが在籍しているものです。OEMでは、「どのようなビールを開発したいか」「どんな原料を使いたいか」といったヒアリング内容に基づいて、ビールのプロがレシピを設計。プロの手によってオリジナルビールが開発されるため、失敗も少ないと言えるでしょう。

初期費用を抑えられる

OEMでクラフトビールを開発・製造する場合、醸造に必要な設備を揃える必要がありません。もちろん、酒造に関する免許や許可を取る必要もないため、クラフトビール導入における初期費用を大幅に抑えることができます。ただし、OEMの場合は製造したビールの配送コストがかかってきます。

OEM利用時の具体的な工程フロー

OEM醸造の魅力は「手軽さ」ですが、実際にどのようなステップで進行するのかが見えにくいと、不安を感じる方もいるでしょう。ここでは、OEM導入の基本的な流れをステップ形式で解説します。

OEM導入の標準フロー

1. 問い合わせ・ヒアリング

  • どのようなビールを作りたいか(味の方向性、色、アルコール度数など)
  • 使用したい副原料(果実、スパイスなど)
  • ターゲット層(観光客向け、飲食店用、EC販売用など)

2. レシピ提案・打ち合わせ

  • 醸造所の担当者が要望に沿ったレシピを設計
  • ラベルやネーミングの相談も同時進行するケースあり

3. 試作・テイスティング(任意)

  • 実際に試作ビールを醸造
  • 試飲後に風味や香りの微調整を行うことが可能

4. 本製造・充填

  • 本番ロットでの製造を開始
  • 樽(15〜30L)や瓶(1,000本〜)など、希望形態で充填

5. 納品・販売スタート

  • クール便で納品されることが多く、在庫管理や冷蔵保管が必要
  • 自社店舗やイベント、通販サイトなどで販売可能

6. 再注文・シリーズ展開(任意)

  • 反響があればレシピを継続・改良し、定番化や季節限定品として展開する企業も多い

工程の期間目安

  • 全体期間は 約1〜3ヶ月 程度
  • 早い場合は1ヶ月以内に納品まで完了することも

OEM導入は、「まず試してみたい」「短期でブランド商品を展開したい」というニーズにぴったりな選択肢です。

ブルワリーとそのメリット

ブルワリーとは、ビール醸造所のこと。マイクロブルワリーとは、小規模なビール醸造所を指します。日本国内でマイクロブルワリーが増え始めたのは1990年代以降で、設備に関する明確な規定はありません。数多くのマイクロブルワリーが見られるアメリカでは、「年間の製造量が180万リットル以下で、外部販売が75%を占める醸造所」と規定されています。そんな、日本でも増加しているブルワリーのメリットは以下の通り。

オリジナルのビールを自由に開発・製造できる

2018年に酒税法が改正され、麦芽・ホップといった主原料以外に、副原料としてスパイス・果実・ハーブ・野菜などを加えたものでも「ビール」として認められるようになりました。つまり、ブルワリーを開業すれば土地の特産物やユニークな副原料を使ったオリジナルのビールを開発・製造できるということ。他社や多店舗に差をつけることができ、集客も期待できるようになるでしょう。

造り立てのクラフトビールを提供できる

マイクロブルワリーに飲食店を併設すれば、ブルワリーで造ったばかりのフレッシュなクラフトビールを提供することができます。他のお酒と違って、ビールは出来立てが一番美味しいとまで言われているため、これは大きなメリットと言えるでしょう。さらに、オリジナルのクラフトビールに合わせたメニューを開発すれば、客単価アップも期待できます。

物流コストがかからない

マイクロブルワリー併設の飲食店であれば、造り立てのクラフトビールをすぐに店舗で提供できます。つまり、物流コストが一切かからないのです。一般的に、ビールを仕入れて提供するとなると配送料がかかってくるためそれを価格に上乗せしますが、物流費ゼロのブルワリーであれば手ごろな価格設定も可能。リピーターやファンの獲得にもつながるでしょう。

土地や余剰スペースを有効活用できる

店舗や施設、企業などで使用していない土地・スペース・古民家・蔵などがあれば、それを利用してブルワリーを開業することができます。小規模なマイクロブルワリーであれば、6坪ほどのスペースでも開業可能となっています。

ブルワリー導入の段階別ステップと必要スキル

ブルワリーの開業は大きな決断ですが、その分ブランド構築や体験価値の創出において強みを発揮します。以下に、ブルワリー導入までの基本ステップと、各段階で必要となるスキル・知識を整理しました。

ブルワリー導入までの7ステップ

1. 構想・目的整理

  • 自社でなぜブルワリーをやるのか、狙う客層や提供価値を明確にする
  • 例)地域活性化、飲食店の体験強化、独自ブランド育成

2. スキル習得・醸造体験

  • 醸造スクールやマイクロブルワリーでの研修に参加
  • 自社で醸造担当者を育成するか、採用するかも検討
  • 必要スキル例:

    • 発酵・醸造の基礎知識
    • ビールスタイルの理解
    • 衛生管理/HACCPの基本

3. 事業計画・資金計画の作成

  • 初期投資、収支予測、資金調達方法(自己資金/融資/補助金)を明確化
  • 融資や免許申請時の審査にも活用される重要書類

4. 物件選定・設計プラン作成

  • 醸造用水の確保、電力・排水設備の有無、近隣との距離などを確認
  • 店舗併設型であれば動線や試飲スペースも検討

5. 設備導入の選定と内装工事

  • 国内/海外製、新品/中古の違いを比較しながら選定
  • 小規模なら300〜500L程度の仕込み設備が一般的
  • 必要スキル:

    • 設備仕様書の読み取り
    • 冷却・排水・発酵管理の知識
    • コストと品質のバランス感覚

6. 酒類製造免許の申請

  • 所轄税務署へ「ビール製造免許」または「発泡酒製造免許」を申請
  • 書類審査〜現地調査を経て、平均6ヶ月〜1年かかる
  • 注意点:
    • 免許申請には事前に物件取得が必要
    • 製造計画・販路・財務基盤などが審査される

7. 製造・販売開始

  • 初回仕込み・ラベル申請・販売計画を実行
  • 店舗での提供、EC展開、地域イベント出店など多角的に販売

運営後に求められるスキル・体制

  • 品質管理/工程管理(再現性・衛生・味の安定)
  • 在庫管理と発注調整
  • SNSマーケティング・販売促進
  • ファン育成と体験設計(醸造所見学/試飲会など)

ブルワリーは時間とコストがかかりますが、自由なものづくりとブランド発信が可能です。導入を目指す場合は、「自社でどこまで担うか、誰と組むか」も含めて検討していきましょう。

編集部まとめ
WITHBEER クラフトビール導入マニュアルウィズビア
お店の規模や売りによって適切な方法を選択しましょう

OEMとブルワリーの概要とメリットについて見てきましたが、OEMの場合は低コストでの導入が叶う反面、物流費がかかります。冷蔵での配送となるためコストが意外とかかり、メーカーによっては樽を返送する際に別途送料が発生するケースも。また、メーカーの工場から店舗までの距離があるとどうしても鮮度が落ちるため、味に変化が生じることもあります。

ブルワリーは開業にあたっての初期費用が比較的高額ですが、飲食店併設型であれば物流費はゼロ。つくりたてで一番美味しい状態のクラフトビールを、その場で提供できるのが魅力でしょう。製造量についても調整がきき、ムダがありません。また、ブルワリー併設という独特の景観が集客の「引き」になることも考えられます。

ここまでOEMとブルワリーの違いについて見てきましたが、総括すると小ロット製造であればOEMのほうがコスト的に有利。中~大ロットになると、マイクロブルワリーに軍配が上がると言えそうです。

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