クラフトビールが注目を集める今、自社でもクラフトビールを導入したいという企業・施設は少なくありません。せっかくクラフトビールを造るならオリジナルの商品を開発したい、そういった場合の選択肢には「OEM醸造」と「ブルワリー開業」の2つの方法が挙げられます。ここでは、OEMとブルワリーの違いについて解説していきますので、情報を参考にしてみてください。
クラフトビールの導入には、「OEM醸造」と「ブルワリー開業」という2つの方法がありますが、どちらが自社にとって最適か判断するのは簡単ではありません。そこでまずは、以下の簡易チャートを参考に、ご自身の目的や状況に合った選択肢を確認してみましょう。
① 初期投資として1,000万円以上の予算がある
└─ Yes → ② 開業までに1年程度の準備期間をとれる
└─ Yes → 【ブルワリー開業】向き
└─ No → 短期型の小規模ブルワリー/OEM併用がおすすめ
└─ No → ③ 少量から試験的に始めたい
└─ Yes → 【OEM醸造】向き
└─ No → 他手段を検討(仕入れ販売など)
OEMは低コストでスピーディーに導入できる反面、製造工程の自由度は限定されます。一方、ブルワリーは初期投資と準備期間を要しますが、オリジナリティや醸造体験価値を最大限に活かせます。
クラフトビールの導入を検討する際には、「低リスクで試したい」「長期的にブランドを育てたい」など、企業ごとに異なる目的があります。ここでは、導入目的や運用条件に応じて、どちらの方法が適しているのかを分かりやすく整理しました。自社の状況と照らし合わせて、導入スタイルを選ぶ参考にしてみてください。
| 導入目的・状況 | 向いている導入方法 | 解説 |
|---|---|---|
| まずは少量からテスト導入して反応を見たい | OEM醸造 | 小ロットでの製造が可能。初期投資が抑えられ、柔軟に試せるためリスクが低い。 |
| イベントや季節限定商品を出したい | OEM醸造 | タイミングに合わせて短期製造できるので、販促にも活用しやすい。 |
| 空きスペースや自社物件を活用したい | ブルワリー | 余剰スペースを活かして常設のマイクロブルワリーとして活用可能。観光資源化も。 |
| 地域性やストーリーを活かして独自ブランドを構築したい | ブルワリー | 副原料や製法を自由に選べるため、地域の特産物やテーマを反映しやすい。 |
| 物流コストや在庫リスクを最小化したい | ブルワリー | 店舗併設型にすれば製造直販ができ、流通経費をカットできる。 |
| ビール製造に継続的に関わりたい/体験価値を提供したい | ブルワリー | 製造工程そのものをビジネスや観光価値として活用できるのが強み。 |
| 中長期的に利益率を高めていきたい | ブルワリー | 初期投資は大きいが、原価率を下げていくことで利益率が向上するモデルを組める。 |
なお、最初はOEMで市場ニーズを探り、将来的にブルワリー開業に発展させるといった段階的な導入も選択肢の一つです。無理のない予算とスケジュールで、段階的に自社ブランドを確立していく流れも広く採用されています。
このように、自社の目的や制約に合わせて導入手段を選ぶことで、クラフトビールの活用はより効果的かつ持続可能なものになります。次のステップを検討する際の参考としてご活用ください。
導入方法を選ぶ上で見逃せないのが「免許制度」の違いです。以下の表で簡単に比較してみましょう。
| 区分 | 必要な免許 | 補足事項 |
|---|---|---|
| OEM醸造 |
原則不要(製造は委託先が実施) ※自社ブランドで販売する場合は「自己商標酒類卸売業免許」が必要になるケースあり |
法的手続きや設備準備は委託先が実施。テスト導入に向いている。 |
| ブルワリー |
ビール製造免許(年間60kL〜) または発泡酒製造免許(年間6kL〜) |
設備・人材・事業計画・衛生管理体制の整備が必要。取得まで半年以上かかる場合も。 |
※なお、2020年代以降は発泡酒免許の活用によって「副原料入りクラフトビール」の醸造も可能になっています。
下記はOEM醸造とブルワリー開業における、主な費用・スケジュール・制約条件などを一覧にした比較表です。
| 項目 | OEM醸造 | ブルワリー開業(マイクロブルワリー) |
|---|---|---|
| 初期費用 | 数万~数十万円(レシピ開発・試作) | 設備・内装・物件取得などで1,000万円〜3,000万円 |
| 製造ロット | 15~30Lの樽、瓶なら1,000本〜から対応可能なメーカーあり | 1仕込あたり200〜500Lが標準 |
| リードタイム | 約1〜3か月(開発+製造) | 約12〜24か月(物件確保・免許取得含む) |
| 物流・在庫 | 冷蔵配送が必要/在庫保管リスクあり | 店舗直送可能/冷蔵物流コスト不要 |
| メリット | 小ロット・短納期・設備不要 | 自由な製品設計・出来立て提供・ブランド力向上 |
| デメリット | 醸造自由度が低い・輸送コストが発生 | 高コスト・時間と労力が必要・免許取得ハードル |
OEM醸造は、初期費用や導入スピードの面で優れており、少量生産やテスト販売を目的とした導入に適しています。一方で、自由なレシピ設計や出来立ての提供、ブランド価値の向上を目指す場合は、ブルワリー開業が有効です。ただし、ブルワリーは高額な初期投資や免許取得、長期的な準備期間が必要になるため、事業計画や目的に応じた選択が重要です。
コストとスケジュールのバランスを踏まえて、自社にとって最適な導入方法を見極めましょう。
OEMとは「Original Equipment Manufacturing」の略称で、他社ブランドの製品製造のこと。クライアントの名義やブランド名を冠した商品の製造を、委託されたOEM会社が代わりに行うというサービスです。クラフトビールの場合、OEM醸造を手がける企業がクライアントの希望するビールを製造し、納品するという形になります。そんな、クラフトビールのOEM醸造のメリットは以下の通りです。
クラフトビールのOEM醸造を行っている企業の多くが、小ロットに対応しています。初めてクラフトビールを導入するといった場合、いきなり大量に製造するのは不安が残るもの。そういった場合、OEMであれば小ロットからスタートして顧客の反応をチェックすることができます。また、マイクロブルワリーの導入が難しい店舗などであっても、OEMを利用すればオリジナルのクラフトビールを提供することが可能です。
クラフトビールのOEMを手がけているメーカーには、その道に詳しいプロフェッショナルが在籍しているものです。OEMでは、「どのようなビールを開発したいか」「どんな原料を使いたいか」といったヒアリング内容に基づいて、ビールのプロがレシピを設計。プロの手によってオリジナルビールが開発されるため、失敗も少ないと言えるでしょう。
OEMでクラフトビールを開発・製造する場合、醸造に必要な設備を揃える必要がありません。もちろん、酒造に関する免許や許可を取る必要もないため、クラフトビール導入における初期費用を大幅に抑えることができます。ただし、OEMの場合は製造したビールの配送コストがかかってきます。
OEM醸造の魅力は「手軽さ」ですが、実際にどのようなステップで進行するのかが見えにくいと、不安を感じる方もいるでしょう。ここでは、OEM導入の基本的な流れをステップ形式で解説します。
OEM導入は、「まず試してみたい」「短期でブランド商品を展開したい」というニーズにぴったりな選択肢です。
ブルワリーとは、ビール醸造所のこと。マイクロブルワリーとは、小規模なビール醸造所を指します。日本国内でマイクロブルワリーが増え始めたのは1990年代以降で、設備に関する明確な規定はありません。数多くのマイクロブルワリーが見られるアメリカでは、「年間の製造量が180万リットル以下で、外部販売が75%を占める醸造所」と規定されています。そんな、日本でも増加しているブルワリーのメリットは以下の通り。
2018年に酒税法が改正され、麦芽・ホップといった主原料以外に、副原料としてスパイス・果実・ハーブ・野菜などを加えたものでも「ビール」として認められるようになりました。つまり、ブルワリーを開業すれば土地の特産物やユニークな副原料を使ったオリジナルのビールを開発・製造できるということ。他社や多店舗に差をつけることができ、集客も期待できるようになるでしょう。
マイクロブルワリーに飲食店を併設すれば、ブルワリーで造ったばかりのフレッシュなクラフトビールを提供することができます。他のお酒と違って、ビールは出来立てが一番美味しいとまで言われているため、これは大きなメリットと言えるでしょう。さらに、オリジナルのクラフトビールに合わせたメニューを開発すれば、客単価アップも期待できます。
マイクロブルワリー併設の飲食店であれば、造り立てのクラフトビールをすぐに店舗で提供できます。つまり、物流コストが一切かからないのです。一般的に、ビールを仕入れて提供するとなると配送料がかかってくるためそれを価格に上乗せしますが、物流費ゼロのブルワリーであれば手ごろな価格設定も可能。リピーターやファンの獲得にもつながるでしょう。
店舗や施設、企業などで使用していない土地・スペース・古民家・蔵などがあれば、それを利用してブルワリーを開業することができます。小規模なマイクロブルワリーであれば、6坪ほどのスペースでも開業可能となっています。
ブルワリーの開業は大きな決断ですが、その分ブランド構築や体験価値の創出において強みを発揮します。以下に、ブルワリー導入までの基本ステップと、各段階で必要となるスキル・知識を整理しました。
ブルワリーは時間とコストがかかりますが、自由なものづくりとブランド発信が可能です。導入を目指す場合は、「自社でどこまで担うか、誰と組むか」も含めて検討していきましょう。

OEMとブルワリーの概要とメリットについて見てきましたが、OEMの場合は低コストでの導入が叶う反面、物流費がかかります。冷蔵での配送となるためコストが意外とかかり、メーカーによっては樽を返送する際に別途送料が発生するケースも。また、メーカーの工場から店舗までの距離があるとどうしても鮮度が落ちるため、味に変化が生じることもあります。
ブルワリーは開業にあたっての初期費用が比較的高額ですが、飲食店併設型であれば物流費はゼロ。つくりたてで一番美味しい状態のクラフトビールを、その場で提供できるのが魅力でしょう。製造量についても調整がきき、ムダがありません。また、ブルワリー併設という独特の景観が集客の「引き」になることも考えられます。
ここまでOEMとブルワリーの違いについて見てきましたが、総括すると小ロット製造であればOEMのほうがコスト的に有利。中~大ロットになると、マイクロブルワリーに軍配が上がると言えそうです。