マイクロブルワリーを開業するためには、その前提としてクラフトビールの種類に習熟しておく必要があります。実際に様々な種類のビールを飲み比べ、オリジナリティも加味した独自のマイクロブルワリー開業を目指していきましょう。
ビールは、その製造方法により大きく「ラガー」と「エール」に分かれます。どちらもよく耳にする言葉ですが、それぞれの違いを正確にご存じない方もいるでしょう。
結論からいうと、ビールは酵母菌による発酵のさせ方の違いによりラガーとエールに分類されています。それぞれの違いや特徴を見てみましょう。
5~10度の低温でゆっくりと発酵・熟成させたビールをラガーと言います。酵母による発酵期間は6~10日で、その後の熟成期間は1か月ほど。発酵中の酵母が麦汁の下のほうへ沈んでいくことから、ラガーの発酵方法は下面発酵と呼ばれます。
麦汁の温度が低いことから、雑菌が繁殖しにくく管理しやすいことが特徴です。
ラガービールには、熱処理をするタイプと熱処理をしないタイプがありますが、このうち熱処理をしないタイプのビールを「生ビール」と言います。
居酒屋のメニューにある生ビールはもちろん、ドラフトビールと呼ばれるビールも生ビールの一種。大手ビールメーカーが製造しているラガービールも、その多くが生ビールです。
15~20度の高温で早めに発酵・熟成させたビールをエールと言います。酵母による発酵期間は3~6日で、その後の熟成期間は2週間ほど。発酵中の酵母が麦汁の上のほうへ浮き上がっていくことから、エールの発酵方法は上面発酵と呼ばれます。
ラガーに比べて管理が難しいことから大量生産には不向きですが、少量ながらもこだわりのビール作りを目指すマイクロブルワリーでは、ラガーよりもエールが好まれる傾向もあります。
19世紀にチェコで誕生した種類のビール。クリアな色でアルコール度数はやや低く、爽やかな風味とキレのあるのどごし、適度なホップの苦味などが特徴です。
一般的に日本で流通しているビールの99%は、このピルスナー。ピルスナーと知らず、毎晩飲んでいる方も多いことでしょう。世界で流通しているビールの7割もピルスナーと言われています。
ドイツのバイエルン地方で誕生したと考えられているビール。見た目が黒く、やや甘めながらもすっきりとした味わいが特徴です。ローストした麦芽の香ばしい香りを好む方も多いことでしょう。
一般的に、日本で「黒ビール」と呼ばれているビールの多くはシュヴァルツ。後述する「スタウト」と似た外観ですが、製造工程はまったく異なります。詩人・ゲーテが好んで飲んだという逸話も。
ドイツのハンベルグで誕生したと言われているビール。燻製した麦芽を原料とし、スモーキーでやや甘さのある味わいが特徴です。
ビール製造所が火事に遭い、焼け焦げたモルトでビールを作ってみたことがラオホの始まり、とする逸話もあります。
イギリスのバートン・オン・トレントという町で誕生したビール。色が薄めで美しく、芳醇なホップ・モルトの香りを楽しめるのが特徴です。
ペールエールは、長らくイギリスで愛されているビールとして有名。アメリカ産ホップを使った「アメリカン・ペールエール」も人気です。
IPA(インディア・ペールエール)は、18世紀、インド在住のイギリス人にペールエールを送る過程で生まれたビール。一般的なペールエールに比べホップの香りが強く、また苦味が強いことも特徴です。
インドにペールエールを送るための長い航海中、ペールエールが傷んでしまわないよう、防腐剤としてホップを大量に投入したことがきっかけで生まれたエールです。
アイルランド発祥の著名なビール、「ギネスビール」の創業者が開発したと言われるビール。色が黒く、ロースト麦芽特有の香ばしさや苦味などが特徴です。
シュヴァルツと同様、日本では「黒ビール」としてまとめられることがありますが、シュヴァルツは下面発酵によるラガーの一種。スタウトとは区別しましょう。なお、日本で流通している黒ビールはシュヴァルツが主流です。
南ドイツで誕生し、ドイツの伝統的なビールとして定着しているヴァイツェン。バナナにも似たフルーティな香りが特徴で、ホップ特有の苦味は強くありません。
他の一般的なビールとは異なり、大麦ではなく小麦が主な原料。酵母をろ過していない「ヘーフェ・ヴァイツェン」、酵母をろ過した「クリスタル・ヴァイツェン」、小麦が多めでアルコール度数が高い「ヴァイツェン・ホック」などに分類されます。
一口にビールとは言っても、ご説明した通り実に様々な種類があります。ブルワリー開業を目指す方は、他のお店との差別化のためにも、ぜひ各ビールを実際に口にし、それぞれの特徴を体で感じてみてください。
ベースとなるビールのスタイルを決めてオリジナリティを加え、「自分にはあそこのビールしかない」と思わせるコアなファンの獲得を目指していきましょう。